Live Report

KUES 3rd LIVE ~I'm fine!~

――最初に感じたのは、大きな大きな宇宙だった。


KUES2ndLIVEのあった、あの春の日。もともと鍵盤楽器が好きだったこともあって、ひょんなことで知ったこのLIVE、本当に軽い気持ちで見に行ったのだ。


そして、打ちのめされた。


そこはそれほど大きなホールではなかったはずだった。だが、ひとたび数人の“魔法使い”たちがエレクトーンの前に座った途端、世界が様変わりした。たかが数台ばかりのエレクトーンから奏でられる美しい旋律たちに、幾度も絶えることなく背筋に心地よい戦慄が走った。いつまでも食い入るように舞台を見つめ続けた。あの小さな部屋の中には、確かに、果てしなく大きく広がる、一つの宇宙があったのだ。


LIVE後、僕がすぐにKUESの仲間に入りたい!と思ったのは、単に「音楽が好きだったから」、という理由もあったんだけど、たぶん本当は「彼らのような魔法使いになりたい!」という気持ちがあったからなんだと思う。


――そして、約半年。


葉が色づくこともなく散っていく、夏から一気に冬に移ったような、11月にしては寒い日が続いていた。ついに、3rdLIVEの季節がきていた。目前に迫ったLIVEを前に、ビラや看板などを作った。例会でとことん話し合い、担当のメンバーがたくさんの時間を割いて、苦心の末に作り上げたものだ。もうこうなりゃ負けてられない、気合入れるぞ!と、誰もが本気になり始めていた。


11月20日夕刻。LIVE会場に、エレクトーンが4台、やってきた。こいつらを使って、みんなと一緒に宇宙を創ることができるんだと思うと、ワクワクした。何度もアンサンブルのリハーサルを繰り返す傍ら、みんな夜中までずっと教室の内装作業をしたり、プログラムを作ったり、司会進行の確認をしたり。実はこの日あたりにやっと譜面が完成したというアンサンブルもあったとか。それぞれがそれぞれの役割を、楽しみながら完遂しようと、一生懸命だった。


11月23日、朝。KUES3rdLIVEの日がやってきた。ワクワクしながらも、朝から心臓がバクバクいっていた。最後のリハーサルをする間、その鼓動がどんどん速くなっていった。頬が上気したものの、それでも慣れた顔つきをした上回生の姿に尊敬する。13:30に会場し、しばらく後に会場を見た瞬間、鼓動はピークを極めた。土曜で、かつまだ開演まで時間があるのに、もうすでに立ち見の人が出ているではないか。LIVE初体験の僕は、おいおいなんでこんなに多いんだよ、めちゃくちゃ嬉しいけどどうしよう…と混乱し右往左往していた。だから、時間を感じる余裕もなく、すぐ開演してしまった。


だけど、本当に不思議だけど、自分が演奏している時はすごく落ち着けたのだ。それどころか、最後にお客さんに手拍子してもらいながらみんなで演奏したMAMBO MEDLEYに至っては、楽しくてしょうがない、という状態だった。なんでだろう?


このとき、「やっと、自分も本当の“魔法使い”になれたんじゃないかな」、とふと思った。そう、自分でも気づかないうちに、心から仲間の演奏に聞き入り、自分の演奏に入り込み、そういったことを積み上げているうちに、いつの間にか、あの小さな部屋にいるみんなが、大きな大きなKUESの宇宙に溶け込んでしまったんじゃないか、と思ったのだ。


11月24日、LIVE2日目。この日は日曜ということもあって、すぐに会場は満席になり、立ち見の人もたくさんいた。この日も鼓動は速かった――が、昨日の感動の影響か、「うずうずしてたまらない」という気持ちが強かった。それはきっと僕だけではなかったはずで、誰もが昨日よりもさらに余裕を持って演奏ができた


昨日以上によいみんなの演奏に魅せられ、昨日以上に楽しくてしょうがないMAMBO MEDLEY…だったのだが、それだけに、曲が終わると、大きな達成感と同時に、大きな寂しさが湧き上がってきた。もちろんKUESはこれで終わりじゃない。だけど、今この瞬間は二度とこない。この最高の時間を終わらせたくない。この会場を後にするのが本当に嫌だった。そのときの感情を具体的な言葉に表すのは、難しすぎてちょっとできない。


このLIVEから初めて、KUESに参加した仲間もいた。


このLIVEを最後に、KUESに別れを告げる仲間もいた。


どちらにとっても、大切な思い出になったはずだと思う。


――LIVE後、打ち上げに三条へ行った。それはもう、ものすごく楽しかった。騒ぎすぎて店員さんに釘を刺されるくらい、みんなものすごくはしゃいでいた。LIVE会場での二次会はもっと楽しかった。2nd LIVEでやっていた懐かしい曲を演奏したり、他の人の曲を演奏したり、ソロを披露したり……たくさんの魔法使いが、朝までずっと旋律の宴に酔っていた。


今更だけど、KUESの“魔法使い”になれたこと、僕は心から誇りに思う。あんな宇宙、他のどこにいったって見れるものじゃない。まして創り上げるなんて。客席まで巻き込んでみんなで創り上げたあの宇宙は、格別に最高だった。


でもあの宇宙、もちろんそう簡単にできたわけではない。たくさんの人の、惜しみない労力と気持ちがあったからこそできたんだと思う。KUESっぽい味のある看板を作ったり、方々までビラを配りに行ったり、お客さんを流れに乗せてしまうすごい司会をしたり、あの教室を見事な内装でまとめあげたりした人たち。それに、快くエレクトーンを貸して下さった方、いつもの練習させていただいた出町・御池センターの皆様。ただ通りかかっただけなのにLIVEを見て下さった人たち。数え切れない魔法使いたちが、宇宙を膨らました。


素晴らしい宇宙を創り上げたKUESメンバーと、たくさんの華麗なる魔法使いたちへ――心から、ありがとう。


I’m fine! ――Me too! !